特に、ターゲット顧客を誰にするのかで、「法人向け営業」と「個人向け営業」という2つのスタイルに大別される。
もちろん、同じ「営業」というカテゴリーで考えれば、共通する部分もあるのだが、それぞれの「違い」を知ると、特性に合わせた思考や動きが要求されることに気付くはずだ。
まず、共通することは、どちらも“人”を相手にすることに変わりはない。
しかし、大きく異なるのは「その人の立場の違い」である。
言葉を変えると「当事者(本人)」なのか、「媒介者(代理人)」なのかと言うことだ。
そもそも「法人」とは、名の通り、法のもとに人が目的を持って集まり、活動をする組織全体を指している。
そう考えると、法人営業として相対する“人”とは、その人本人ではなく、「別人格」なのである。
法人は、目的をもった集団であり、それぞれの持ち場によって組織化されているのが一般的だ。
つまり、客先の法人担当者は、自分の持ち場(所属部署)と立場(職務権限)を持った「媒介者(会社の代理人)」なのだ。
個人を相手に営業する場合、例外を除いて当事者は本人かその家族である。
当事者ということは、決定権も決裁権も有していることになる。
一方、法人営業の場合は、客先担当者はあくまで会社という人格の一部を担う「媒介者」であり、当事者(本人)ではないのが大きく異なる点だろう。
この意味するところは、法人である客先がどのような組織形態を持ち、その担当者が組織のどの部分に位置し、どのような意思決定、決済ルートをつくりあげているのか、と言ったことを把握する必要があるということだ。
では今度は、個人と法人それぞれの「客」としての立ち位置で違いをみてみよう。
客としての当事者と媒介者の違いは、その延長線上にある「責任の大きさ」が深く関わっている。
当事者であれば、責任の範囲も本人か家族の範囲で限定されるのが通常で、万一何かあった場合でも「自己責任」で片が付く。
また、個人として弱い立場であることから、消費者保護の観点で様々な法規制で守られていることも特性の一つと言えよう。
一方、法人担当者としての立場であるとどうだろうか。
前出のとおり、法人担当者には特定の所属先と職務権限の範囲が定められており、それに応じた「責任」を背負っている。
しかも、その責任は、個人のように「自己責任」の範疇では済まされない。
万一の場合、組織形態上の連鎖責任に波及することも十分にありうるのだ。
それだけに、企業には様々なチェック機能やフィルター機能を設けているのもうなずけるし、個人とは比較にならないほど取引には慎重にならざるを得ない理由があるということだ。
その法人取引の特性については、次回 「法人営業の定石(BtoB取引編)」 で詳しくお伝えするとしよう。




