今回は指向を変えて、実践現場の視点から商談プロセスを捉えてみよう。
まず、これまで示してきた商談プロセスの意義についてまとめると次のとおりとなる。
・商談とは受注獲得を目指した営業活動の一部である。
・受注を獲得するためには、一連の流れを考えることが必要になる。
・一連の流れとは、目的が異なる幾つかの段階で構成されている。
・その段階を明らかにさせ、全体像を示したものが商談プロセスである。
このような定義から、これまで各段階の目的や到達点などについて『定石』を示してきた。
定石とは、物事を動かそうとする時の最善となる方策である。
その成功率を担保する大きな要素が、営業原理とも言える普遍的な理論や科学的根拠である。
しかし、それだけで営業現場がまっとうできるとは思わないでほしい。
なぜならば、商談プロセスなるものは、売り手側の都合で導き出された「解」だからである。
当然、お客さんからしてみれば、売り手側のプロセスなんて関係ない話。
まず、アプローチ、次に情報収集、そしてプレゼン、最後にクロージング…
売り手側は、机上論どおりに進めようとしても、お客さんは描いたとおりに従ってくれるわけではない。
お客さんによっては、資料請求から入る人、電話やメールで問い合わせる人、来店する人、訪問を拒絶する人、値引き交渉からいきなり入る人など様々。
売り手のプロセスなどお構いなく、買い手都合で進めようとする。
もちろん、お客さんはそれでいい。
しかし、売り手がお客さんのペースですべて進めてしまうのは少しばかり問題だ。
そこで、営業マンの「実践適応力」が求められるのである。
ここに一つケース事例をあげてみよう。
例)「ある不動産の広告チラシを見て、お客さんから電話で問合せがあったケース」
お客さん:「今日の広告をみたんだけど…」
営業マン:「ありがとうございます」
お客さん:「この○○の物件なんだけど、いくらまで安くできるの?」
営業マン:「お客様はこの物件ご存知なんですか?」
お客さん:「いや、はじめて広告で知ったんだけどね」
営業マン:「そうでしたか…」
さて、あなただったら、この状況からどんな展開を考えるだろうか?
次回「商談プロセスの定石(実践適応編)」において、上記のケースから考えられる対応についてひも解いてみるとしよう。




